ラヴェル作曲の 「ボレロ」をご存知でしょう。
今世紀最高の振付家と言われた、モーリス・ベジャールは、彼の認めたダンサーにだけこの自身が振りつけた演目を踊る事を許しました。
私が初めて観たのは、東京文化会館で1982年ベジャールバレエ団率いた、ベジャールが最も愛したダンサー、ジョルジュ・ドンによる 「ボレロ」でした。
衝撃でした。
巨大な赤い円卓上で一人のカリスマが、20分にもおよぶ静から動へのリズムを、最後絶頂を迎える瞬間まで踊りきる。
その踊りは、生と死、人の愛と性の昇華の感動を 観る者に与えます。
その後続いて、ショナ・ミルクの「ボレロ」を観て以来、ベジャールに大変惹かれ、歌舞伎役者 坂東玉三郎氏との共演の舞台、自身のバレエ団にしか振り付けないベジャール氏が 唯一、東京バレエ団の為に振りつけた、数本の演目も観る機会に恵まれた事は、一昨年末に亡くなったベジャール氏の追悼のあれこれに触れるにつけ 私の感性の一部、大変重要な経験として刻まれているのだと あらためて、思う今日この頃です。
ベジャールのバレエは 美だけでない、人間本来の様々な感情が肉体を通してコンテンポラリーという表現で、愛を伝えていると感じます。これを 哲学・・・と言ったらいいのでしょうか。
100年に一人のダンサーと言われるシルヴィー・ギエムも ベジャールに愛されたダンサーのひとりです。
10数年前にギエム初の「ボレロ」日本公演を、また近年「最後のボレロ」と、銘打って日本縦断して踊ったギエムのボレロも、ドン以来心震える公演でした。
ベジャールが亡くなった今となっては、これ以降「ボレロ」がベジャールのボレロとして 再演される事は無いかとも思われますが、せめて、画面上で観るとすれば、
映画「愛と哀しみのボレロ」は いかがでしょう。
カラヤン、グレンミラー、ヌレエフ、ピアフという4人の芸術家達の激動の人生を描く、4つの都市を舞台にした、壮大な人間ドラマです。
最後の場面では4人がパリのトロカデロ広場に一同に会します。そこに至るまでのストーリー、役柄を演じる俳優達の人選も見所です。
エッフェル塔をバックに ジョルジュ・ドンが踊る 「ボレロ」は圧巻ですよ。
当時は この映画の制作側の名前等を意識せずに劇場に足を運びましたが、監督は、あの「男と女」のクロード・ルルーシュ。
そして、音楽監督はこれまた、「男と女」のフランシス・レイ&ミシェル・ルグラン。
私の人生、感性にもやっぱりつながっています。
さあ、役者は揃いました。 人生を愛を感じる「ボレロ」を 是非お楽しみください!